アーユルヴェーダにおける**「健康」の定義**は、単に病気がない状態を指すのではなく、肉体、精神、そして魂のすべてが調和し、至福に満ちている状態を指します。聖典『スシュルタ・サンヒター』および『チャラカ・サンヒター』に基づき、その詳細な定義を解説します。
1. アーユルヴェーダが目指す健康の目的
アーユルヴェーダ(生命の科学)の主要な目的は、以下の2点に集約されます。
健康な人の健康を維持・増進すること(予防医学的側面)
病気の人を治療し、不調を鎮めること(治療医学的側面)
2. 『スシュルタ・サンヒター』による健康の定義
外科の聖典とされる『スシュルタ・サンヒター』では、健康(スヴァスタ)を以下の肉体的要素と精神的要素の両方が満たされた状態と定義しています。
① 肉体的な健康の条件
トリ・ドーシャのバランス: ヴァータ、ピッタ、カファの3つのエネルギーが平衡を保っていること。
アグニ(消化力)が正常: 食べたものを適切に代謝し、エネルギーに変える力が正常であること。
ダートゥ(身体組織)の生成が正常: 7つの身体組織が正しく作られ、維持されていること。
マラ(老廃物)の生成と排泄が正常: 便、尿、汗などの老廃物が適切に作られ、滞りなく体外へ排出されていること。
② 精神的・霊的な健康の条件
肉体が整っているだけでなく、以下の3つが**「至福(平穏)に満ちている」**ことが不可欠です。
精神(マナス): 心が穏やかであること。
五感(インドリヤ): 感覚器官が明晰に働いていること。
魂(アートマン): 自分自身の本質とつながり、幸福を感じていること。
3. 『チャラカ・サンヒター』による健康の定義
内科の聖典とされる『チャラカ・サンヒター』では、健康を**「ダートゥ・サミヤ(身体要素の平衡)」**と表現しています。
ダートゥの平衡: 身体を構成する要素(ダートゥ)が不均衡になることが「病気」であり、平衡な状態が「健康(正常)」です。
健康は「幸福」: アーユルヴェーダでは、健康は幸福(スカ)そのものであり、病気は不幸(ドゥカ)であると説かれています。
スロータス(経路)の清浄: 身体のあらゆる通り道であるスロータスに害を与えず、心に快適なものが健康に良いものとされています。